終末期りはびりドリッパー

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【悩み】ALS患者との年末

年末になるとやはり年末感というか、どこか1年が終わるムードが漂う。

それは患者さんよりも身の回りの整理整頓をするスタッフの方が強いようだ。 

休みを楽しむ声も聞かれたり、正月の予定を話している人もいたりする。

それは人間だし、いいのかもしれない。

 

入院している患者さんからしたら入院したまま年を越すことはきっと苦痛であろう。

家で過ごす年末であれば、大掃除をしたり、神棚の手入れをしたり、雪かきをしたり…。大黒柱であればその役割を発揮する時期なのかもしれない。

でも入院ともなれば何もしない生活。

僕だったら苦痛なはずだ。

中には入院することで「家族に迷惑をかけなくて済む」と安心している方もいる。

 

 

 

ALSの方との年末

 

担当しているALSの方*1は昨年まで年賀状を作成していたようだ。100人以上とのことで、それだけでもその人の人柄が感じられる。

現在四肢は動かず頸部と眼球運動のみ。

透明文字盤と意思伝達装置でコミュニケーションを図っている。

 

何かできることはないか。

僕自身はそう考えた。

でもその方曰く、「考える余裕がない」と意思伝達装置で伝えてこられた。

 

年賀状はどうかとも聞いてみたが、あまり反応は芳しくなかった。

 

さて、どうしたものか。

 

考える余裕がない時に、セラピストが提案をするべきか否か。

 

僕は提案をしない失敗よりも提案してみて、

選択してもらうことが大事ではないかと思い、

踏み込んで改めてこう聞いてみた。

 

「年賀状の文章を一言添えてみませんか?」

 

 

 

次の日、その方は透明文字盤を使ってこう言った。

 

「ねんが」

 

そう、年賀状のことだった。

もはや年末で、年賀はがきの準備もできていない状況だったが、

写真用紙はあったので、背景はこちらで準備することにした。

裏面はツルツルなので、紙を貼って加工してしまえば、住所が書けるのではないかと考えた。たとえ投函せずとも家族や主治医に渡せるのではないかと思った。

 

 その人は「今」を伝えたかったのかのかもしれない

「よし!」

僕は心の中で少し良い結果を想像しながら意思伝達を装置をセッティングし、

その方に15分ほど入力してもらった。

 

15分後書いた文章はこんな感じだった。

 

「〇〇せんせい  ここさいきんはのどがいたいです」

 

年賀状というよりは、普段主治医に伝える文面と同じようなものだった。

 

年賀状ではないという事実だが、これは今この方が伝えたいこと。

年賀状にはせず、印刷し主治医にそのまま伝えた。

 

僕が年賀状が良いのではないかと思ったのは、僕が思っていただけのこと。

この方はもっと必要だと思っていることは『のどのこと』だったのかもしれない。

「今」の状態を知ってほしいのではないかと感じた。

 

 

これからこの方ができることはなんだろうか。

様々な問題も絡んでいることがさらに悩ませている。

しかしリハビリとして何ができるのかを改めて考えるきっかけとなっている。

 

明日から仕事が始める。

自分に何ができるのか、その方とまた話をしながら見つけていきたい。

 

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Uta

*1:フィクションを加えて書いています。